Number The Brave / Wishbone Ash
デビューから在籍していた MCA Records での最後のアルバムにして、フロントマンの Martin Turner 脱退後にリリースされた最初のアルバムでもあります。 1981年リリースの、スタジオ盤としては「Just Testing」(id:anomala:20070524#p1)に続く11作目の作品。
なんつっても、Martin に代わってベースを弾いているのが John Wetton なところが当時話題になりました。 もっとも、John がレコーディングに参加した時点で収録楽曲のほとんどが用意されていて、John の作品は「That's That」のみにとどまっています。 要するにセッション・ベーシスト的な形での参加だったわけですが、輪郭のハッキリしたサウンドで空間を埋めるタイプのベーシストという点では Martin と同類なので、Steve Upton とのリズム隊にそんなに違和感はないですね。 ちなみに、ライナーによれば、この時 John が用意した楽曲のいくつかは改作されて、後に Asia のレパートリーになったとか。
John の参加とともに、プロデューサーとして、The Police の初期の作品に関わっていた Nigel Gray が参加しているのもポイントでしょうか。 アルバム全体のサウンドテイストに The Police の影響を感じさせるし、過去の作品にはなかったビート感なんかも同様ですね。 John の参加以上に、この作品に影響を与えていると思います。 ここらへんの人選は、バンドの初代マネージャー Miles Copeland が The Police のマネージャーをやっていた縁なんでしょうね。
キーマンのひとり、Martin がいなくなった影響で、独特のウェットな空気感は希薄になっています。 ベース以上に、Martin のちょっと憂いのある歌声は、バンドサウンドのキモでした。 が、上に書いているとおり、The Police 風のタイトなサウンドが新鮮だし、ネガティブな印象はないですね。 楽曲そのもののクオリティがいい線いってるのと、アンサンブルは Wishbone Ash らしさを十分感じさせる仕上がりです。 ロンドンの霧が恋しいファンには違和感があるかもしれませんが、ひとつの作品としてはなかなかのクオリティだと思います。 彼らにしては珍しいカバー曲、Smokey Robinson 作の「Get Ready」も聴き所☆カナ。
なお、この作品は USA 盤と UK 盤で曲の並びが異なっていて、貼ってある紙ジャケ邦盤は UK 盤と同じ並びです。 このCD、入手性にやや難ありで、限定版としてリリースされた紙ジャケ邦盤が一番手に入り易いようですね。 ただし、限定版なので店頭から消えたら探すのに苦労するかもしれません。