Sky Of Avalon(Uli Jon Roth)/Prologue to The Symphonic Legends

Sky of Avalon

Sky of Avalon

奇才Uli Jon RothがSky Of Avalon名義で1996年にリリースした作品です。 タイトルに"Prologue"とあるように、本作の後に本編がリリースされるはずでしたが、今だリリースに関するニュースはありません。 本人のライナーによれば第5作まで構想していたようですが…
サウンドを安直に表現してしまうとクラシックとロックの融合したプログレなんでしょうけど、そういったカテゴライズになんの意味もないことを教えてくれる傑作だと思います。 とにかく叙情的で美しい音世界が、聴く者を圧倒します。


Tommy Heart(Fair Warning)がちょっとオペラチックに朗々と歌い上げる「Bridge to Heaven」で幕を開ける本作ですが、このナンバーは荒川静香選手のおかげで誰でも知ってるプッチーニのオペラ「トゥーランドット」をモチーフに(というかアレンジ)しています。 荒川選手ってUliのファンだったんですね(違 Tommyの歌に続けて、UliのSky Guitarがメインテーマを奏でます。 艶やかなトーンも魅力的ですが、Sky Guitarならではの超高音域を駆使したエモーショナルなプレイは鳥肌もんですね。
ちなみに、Sky GuitarというのはUli考案のカスタムというかかなり特殊なエレクトリック・ギターで、普通は21〜24フレットまでしかないギターのフレットを増設して、より高い音が出せるような構造になっています。 こちらでサンプルムービーが視聴できるので、見た(聴いた)ことがない人はチェキ! 


3曲目の「Pegasus」ではオーケストラをバックにそのSky Guitarを弾きまくっていますが、超高音域でのバイオリンを意識したフレージングを聴くと、もはやエレクトリック・ギターとは言えないような気さえしてきますね。 普通のエレクトリック・ギターでもバイオリン奏法(ボリュームを操作してピッキング時のアタックを消す奏法)というのはありますが、ギターの構造自体を変えてしまうという正面突破のアプローチで新たな世界が広がっています。 魂の叫びというか、エモーショナルという言葉がぴったりなプレイですが、音域の高さという物理的な要因も大きく関与している気がしますね。


4曲目の「Starships of Dawn」から5曲目の「Winds of War」では、Tommy Heartのヴォーカルがすばらしいです。 透明感のある声がオペラ風歌唱にマッチして、壮大なスケールのオケに負けていません。 「Winds of War」では、もうひとりのボーカル、Michael Flexig(Neno)と共に曲を盛り上げています。 ドラムパートもあるし、本作では一番ロックっぽい楽曲なせいか、よりエネルギッシュに歌い上げています。 単純に歌が上手いというのもありますが、声質自体が壮大な曲のムードにぴったり。
この曲はUliのギターソロもめっちゃかっこいいです。 印象的なメロディライン、秀逸な構成で耳に残ります。 難しいことをやっているわけではありませんが、やっぱギターソロはメロと構成がすべてだなと思わせる出来で言うこと無し。


本作は全編約31分しかありませんが、コンセプトアルバムとして完成されているし、楽曲そのものの出来もいいし(一部はクラシックのアレンジですが)、なんといってもUliのSky Guitarとふたりのボーカリストによるパフォーマンスが素晴らしく、高密度で隙のないサウンドに痺れまくりの31分間を過ごせます。 クラシックとロックの融合的な作品は多々ありますが、ここまで濃密に絡み合った世界を構築している作品はなかなか巡り会えないでしょう。 この手は苦手だという人もぜひ聴いてみてください。(音源の入手にやや難ありっぽいですが…)