Camel/Harbour of Tears

ハーバー・オブ・ティアーズ~港町コーヴの物語

ハーバー・オブ・ティアーズ~港町コーヴの物語

1996年リリース作品。 パーソネルはAndrew Latimer(G,fl,Key,Vo)、Colin Bass(B,Vo)、Mickey Simmonds(Key)、David Paton(B,Vo)、Mae McKenna(Vo)、John Xepoleas(Dr)。 他に管弦楽団のみなさん?としてNeil Panton(Ob,Sax,Harmonium)、John Burton(Frh)、Barry Phillips(Vc)、Karen Bentley(Vl)、Anita Stoneham(Vl)がクレジットされていますが、サンフランシスコ周辺で活動しているクラシックの演奏家だそうです。


Andrewが父親の死をきっかけに自身のルーツに興味を持ち、その過程で知ったアイルランド人の祖母一家の悲劇的ともいえる離散の物語を、英国の政策の犠牲になったアイルランド人移民の歴史に重ね合わせ、コンセプトアルバムという形で表現した傑作(と言ってもよいでしょう)。
コンセプトから想像されるとおり、美しく、そして悲しいトーンが支配的です。 アカペラでもの悲しく歌われるケルティック・トラッドの「Irsih Air」から物語がスタートしますが、それに続くAndrewの弾くギターのメロディと音色の美しさはさすがですね。 薄くストリングスを配したバックにのせて、哀愁に満ちたAndrew節が炸裂します。 
3曲目の「Harbour of Tears」は、Camelには珍しく、ボーカルのアレンジが凝っていて、物語を語り聞かせるような効果を出しています。 ボーカルで表情を出して曲の雰囲気を作る手法というのはあまり使ってなかっただけに新鮮な感じがします。


7曲目の「Watching The Bobbins」あたりからは従来のCamel節ともいうべきリズムと変化に富んだ構成で惹きつけらますが、そこはかとなく重苦しい雰囲気なのはコンセプトどおりというべきでしょう。 この曲なんかもそうですが、このアルバムではAndrewのギターが前面に出ていて全体のカラーを支配している場面が多いです。 ギタリストAndrewのファンにはたまらないもんがありますね。
クレジットにもある管弦楽団のみなさんの仕事ぶりも良い感じで、楽曲を彩るのに重要なファクターになっていますが、個人的には、「うわ〜Camel!」みたいなリズムとギターのアンサンブル部分が一番グッとくるのはヲタなのでしょうがないw ただ、楽団のみなさんのおかげで非常に繊細かつ密なサウンドになっているのは特筆すべき点でしょうか。


アルバムの最後は、とても叙情的なAndrewのギターが心に響くインストナンバー「The Hour Candle(for my father)」で締めくくられています。 曲自体は23分ほどの長さですが、後ろの15分間は、かなり小音量で波の音と海鳥の鳴き声だけが収録されています。 この部分が何を暗示しているのか、いろいろ考えるのも興味深いかもしれません。

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内容が内容なだけに、詞の意味をちゃんと把握できたほうがいいので、英語が達者でない人はライナーに対訳がついている日本盤をオススメします。 うちにあるのも当然日本盤ですw