娘。のエース

娘。春コンと後浦なつみコンで、モニコーとLOVEマが双方のセットリストにありますが、
これらの曲は娘。の曲なので、形式的には本家は娘。ということになります。
※モニコーってなっちが言ってるから使うけど、モーコーのほうが馴染むなあ。
娘。春コンは名古屋センチュリーホールで見たけど、この2曲に限らず、オリジナルとは
違うメンバーが歌ってる曲は、娘。の曲ではあるけど今の娘。の曲ではないという感覚が
とても強いです。極端にいうと、後浦なつみコンで、なっちとあややが香水とか歌ってる
のを見て感じる感覚と大差ないかも。今の娘。は歌がヘタだから、とかそういう問題じゃ
ありません。高橋愛ちゃんが、なっちより上手に「ふるさと」を歌ってみせても、それは
愛ちゃん自身のスキルの高さの証明にはなりますが、もはや「ふるさと」ではない別の曲
として聞こえてきます。曲というものは、それがリリースされた当時の時代背景というか、
時代の匂いのようなものと密接にからみあっているし、オリジナルを歌っていたメンバー
の個性が際だっていればいるほど、楽曲そのものと歌い手の結びつきが強固に印象づけら
れていると思います。

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後浦なつみコンで、なっちとごっちんが歌うモニコーを見た瞬間「あ、こっち本家だ!」
と思いました。モニコーのリリース当時ごっちんはいませんでしたが、なぜか素直にそう
思えました。LOVEマにいたっては、全然関係ないあややまで参加してますが、モニコー以
上に、こっちが本家という感覚が強かったです。
でも、よく考えるとこれはあたりまえの感覚かもしれません。なっちとごっちんは娘。の
顔でもあったしエースとして前面に出ていました。両名とも強烈な個性で娘。のカラーを
支配いていたことは確かです。LOVEマであややが参加してても、なっちとごっちんが当時
と同じフレーズを歌えば、その瞬間は当時の娘。の、限りなくリアルな再現です。

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今の娘。のエースは?と聞かれると、とりあえず高橋愛ちゃんの名前が浮かんできます。
彼女は少なくともなっちよりは歌は上手いし、ステージ上でのパフォーマンスもいい線い
ってると思います。が、彼女の声はとても素直な感じで、歌い方にもクセがありません。
彼女の弱点はここでしょう。エースというからにはそれなりのスキル以上に、個性という
ものが必須だと思います。郡山のステージでごっちんが「どんなに不景気だって〜」と歌
い出した瞬間、時間が一気に1999年の9月当時にタイムスリップしました。ごっちんのあ
のとても個性的な声の力がなせる技です。個性的でスキルがあるメンバーといえば、ミキ
ティですが、彼女の場合は、あまりにも個としての「藤本美貴」が強調されてしまい、娘。
という集団の中でのエースという立場にはちょっとそぐわない感じがします。春コンでの、
ソロでロマモーを歌う姿を見れば、それが本来の彼女のいる位置であることを痛感します。

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愛ちゃんの場合、「時代」というものが彼女に味方していないのも不幸な点でしょうか。
いまや娘。のCD売上も10万枚は至難の領域だし、LOVEマのような時代を象徴するような歌
もありません。メディア露出もかつてに比べれば激減しています。そして、今の娘。のコ
ンサートでの「歌」についていえば、素人芸としかいいようがないほど悲惨な状況です。
ビジュアルに誤魔化されますが、歌だけを聞くと、愕然とするくらいひどい。もちろん全
員がひどいわけではありません。愛ちゃんをはじめ、ミキティ、れいな、等々ちゃんと歌
えるメンバーもいますが、歌えないメンバーのすべてをカバーするのは無理だし、そうい
う演出にもなっていません。あえて歌えないメンバーにも歌わせているから悲惨なことに
なっているわけす。もはや娘。は歌を半分捨てた、と言っても過言じゃないでしょう。
歌以外での愛ちゃんは、あまり前面には出てきません。歌を半分捨ててる状況では、完全
に埋没してしまいます。強烈な個性という武器があれば、この状況を打破することも可能
かもしれませんが、彼女の資質からすると望めそうにありません。

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今の娘。は実質的なエース無しの状態だと思います。歌というものに直球勝負で望むよう
な体制であれば、愛ちゃんの魅力も十分発揮され、さらなる向上も期待できるでしょう。
ですが、「涙の止まらない放課後」のような楽曲を、あのメンバー構成でリリースしたり、
春コンでの目を覆いたくなるような惨状を良しとする制作者サイドの意図を素直に受け止
めると、真っ向から勝負する気はさらさらないようです。かつての娘。は歌というものに
真っ正面から取り組んでいました。もちろん、それを表現する人材がそろっていたから、
とか、時代がそういう時代だったから、というのはあるでしょう。アプローチが変わった
のだから懐古しててもしょうがねえ、という意見はあると思います。ですが、娘。が歌を
捨てたらそこで終わりだと思っています。メンバーの入れ替えをしながら、娘。にしか表
現できない歌を歌い続けてきたからこそ、これだけ長い期間、娘。が続いているのだと思
います。今度のオーディションで新しい才能を持った子が選ばれ、さらなる変化がもたら
されるのを期待しています。